A nuclear receptor-like pathway regulating multidrug resistance in fungi. Nature, Vol. 452, Pages 604-609, 2008.

ネイチャーから(そういえばずっとネイチャーだ)。

今回は薬の話です。

体にばい菌(微生物)が入った時、現在はさまざまな薬があるので、普通はそのばい菌に応じて適切な薬を飲めばあっという間に微生物を退治することができます。

でも、体力が落ちたとき(病気や高齢の方など)にどんな薬を飲んでも退治することができない微生物が体に入ってしまうケースがあります。このことを、多剤耐性といって、多剤耐性菌の存在は今大変な問題になっています(院内感染したってニュースがときどきありますね)。

では、どうやって多剤耐性菌は薬(詳しくは抗菌剤といいます)によって退治されないのか?

本来だと、

わたしたちの細胞>その中に入った微生物>微生物の中にある薬の標的

の順に抗菌剤は中へ中へと入って標的をアタックして、微生物を退治します。

しかし、多剤耐性菌の中に抗菌剤が入ると、本来の薬の標的以外に、薬は多剤耐性菌のDNAにくっついてしまうようになり、DNAに働きかけて、あるタンパク質をつくらせてしまうのです。

つくられるタンパク質はどんなタンパク質かというと、いろいろなものをくみだす、まるでポンプの役割をするタンパク質なのです(専門的にはABCトランスポーターという名前で呼ばれます)。

多剤耐性菌は私たちの細胞の表面にABCトランスポーターをたくさんつくらせて、抗菌剤が細胞へはいってきても、すぐにくみだしてしまうことでうまく薬から逃げているのでした。

自分にとって危険なものと判断したら遠ざける戦略として、多剤耐性菌はみごとなことをしているわけですが、ホントにうまいことを考えつきますよね。



とここで感心している場合ではないですね。
なので、私たちはこんな頭のいいやつらにどうやって対抗するのか。
おそらく、抗菌剤が多剤耐性菌のDNAにくっつくのを阻止するような薬を開発するのが手ですかね。
でも、今度はそれをかいくぐるものが現れたら?