Direct conversion of fibroblasts to functional neurons by defined factors. Nature, Vol. 463, Pages 1035-1041, 2010.

やはりこの論文は生命理工学系として触れない訳にはいけない、ということで。。。

これまでも、何らかの機能を持つ(分化した)細胞をつくり出す方法として、ES細胞やiPS細胞を用いる、というやり方がありました。

ただ、これらは一旦未分化な状態にした後にある特定の分化細胞を作る、というステップを踏む必要があり、時間がかかるうえに未分化なまま残ってしまう細胞もあり、ガン化してしまう恐れもあります。

そこで、この論文では、神経細胞とは別の分化した細胞である線維芽細胞(体を支える結合組織にある細胞)に対して、3つの遺伝子(Ascl1, Brn2, Myt1l)を導入することで神経細胞に変えることができた!ということを報告しています。

神経細胞に誘導できた、ということでできた神経細胞のことをinduced neuronal (iN)細胞と名付けていますが、このiN細胞、ES細胞やiPS細胞のように神経細胞以外に変えることができるのか、今回行ったマウス以外の動物、ヒトでも可能なのかなど、ますますの研究が必要そうです。

ちなみに、なぜ今回3つの遺伝子だったのか?これは神経細胞で主に発現している遺伝子19種を選び出し、線維芽細胞にその遺伝子をくみこんでいって、神経細胞に誘導できる遺伝子5種を選定して、またそこから最終的な3種を場合分けして選定、というなかなか時間のかかる経過の後に見つかったみたいです。