Induction of tumor immunity by targeted inhibition of nonsense-mediated mRNA decay. Nature, Vol. 465, Pages 227-230, 2010.

最初に訂正です。

前回の長原担当分の内容の中で、年間5件程度Natureに疑義の問い合わせがありますと書きましたが、これはだいたい1冊あたり5件程度(Natureは週刊誌なので年間の延べ問い合わせ件数は相当な数になります)の誤りでした(以前の記事は修正しました)。


安部先生の記事を見て誤訳に気づきました。間違いに関する記事を書いたらその記事の内容を間違えました。笑うに笑えない・・・安部先生、どうもありがとうございました。やはり他人の意見は重要だということで。。。



さて、今回の論文は癌細胞をなくすための新たな方法についてです。実は私たちが持っている、異物を排除する免疫システムは、正常な細胞と違う、「異物の」癌細胞を見分けることができます。ただ残念ながら免疫システムが検出する、癌細胞の表面にある違い(抗原とよびます)はあまり多く出現していないため、うまく免疫システムが働かず、結果として癌細胞は除去できずに増殖してしまいます。

これまでに免疫システムを活性化して癌細胞をより上手に検出し、癌細胞をむりやりなくそうという試みもなされています。


今回は免疫システム側を強化するのではなく、癌細胞の違い(抗原)をたくさん出現させるように癌細胞の遺伝子の使われ方を調節したところ、癌の増殖が抑制された!という逆の側からのアプローチです。


今回のアプローチを他のアプローチと組み合わせることで相乗効果が期待できそうですね。