こんなとこにもアミノ酸 3

2010年07月03日

長原先生が前回ご紹介して下さったヒトゲノムの解析完了の2000年、私はまだ進路も漠然としたピッチピチ(?)の大学生で、へぇそうなんだ〜くらいにしか思っていなかったように思います。
しかし、ジェームズ・ワトソンが自身の全遺伝子情報を公開した2007年は私にとって衝撃的でした。やっぱり研究者はこうでなくっちゃ!と研究者を夢見る大学院生の私は思ったわけなのですが…。


今日はまたお知らせも特にないので、論文の紹介を。

"D-Amino Acids Trigger Biofilm Disassembly"
Science, Vol. 328 (5978), pp 627-629, 2010.


"バイオフィルム"とは水垢だったり歯垢だったり、皆さんの周りでもよく(?)観察される細菌の膜のことです。細菌はその膜の中に集団となって存在しています。人間にとっては非常にやっかいなバイオフィルムですが、細菌にとっては外部環境から自身を守る重要な構造体です。水場であれば流されにくくなるし、病院等ではバイオフィルム内部の細菌には抗生物質や薬剤が効きにくかったりします。

しかし、一定の場所に留まり増殖すればその場の栄養を使い切ってしまうこともあります。古くなったバイオフィルムは壊れてしまうのですが、その時にバイオフィルム分解を誘発する物質があるのではないか?あるとしたらそれは何か?というのを明らかにした研究です。
これが解れば、医療や産業の現場で問題になっているバイオフィルムの除去や形成防止に役立てることが出来るかもしれません。

古くなったバイオフィルムの成分をクロマトグラフィーで分離して、その画分をこれからバイオフィルムを作ろうとしている細菌に与えたところ、バイオフィルムの形成を阻害する画分が見つかりました。その画分を調べた結果、阻害をしているのはD型のアミノ酸 (D-チロシン、D-メチオニン、D-トリプトファン、D-ロイシン) であることが解りました。またこのD型のアミノ酸はバイオフィルムの形成を阻害するだけでなく、出来てしまったバイオフィルムの分解も誘発することが解りました。

D型のアミノ酸が、細菌の細胞壁の構成成分であるペプチドグリカンに組込まれることによって、細胞とバイオフィルムの間の架橋が出来なくなるようです。

タンパク質に使われるアミノ酸は全てL型で、我々人間はもちろんD型のアミノ酸を合成することは出来ませんが、D型のアミノ酸を作る多くの細菌が見つかっていますので、これらの細菌もバイオフィルム分解の誘発にD型のアミノ酸を用いている可能性が考えられます。
論文の実験は主に Bacillus subtilis という菌を用いて行われましたが、Staphylococcus aureus (黄色ブドウ球菌) や Pseudomonas aeruginosa (緑膿菌、日和見感染) といった菌においても、D型アミノ酸がバイオフィルムの形成を阻害することが確認されました。


栄養がなくなったら勝手に崩壊するんじゃないかしら?とは思わず、分解においても制御があるのではないかと考えた、その目の付けどころが、やるなぁと思いました。



文責:アベ


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