研究論文

2013年を振り返る

2013年12月29日

2013 in review. Nature, Vol.504, Pages 344-349, 2013.

2013年もあともう少し。みなさんはいかがお過ごしでしょうか。

私は今年は例年よりも年の瀬という感覚がなく、まだまだ仕事がたまっています。
受験生の正月は3月だ(って今もある予備校では言っているのでしょうか)!という気分で大学教員もそんなもんなのかもしれません。そもそも授業がない時には会議が入るし。。。

グチで始まってしまいました。

ただ、このブログで紹介しているネイチャーに掲載された、2013を振り返る記事を読んでみると、あまり明るい科学ネタがないようです。

巨大隕石落下。そんなこともありましたね。1908年以来の巨大隕石落下だったそう。

アメリカ政府機関閉鎖。海の向こうの話と思っていたら、毎日チェックする、アメリカ政府運営の論文検索サイト、PubMedまで影響を受け、ごめんなさいというメッセージがでていたのにびっくり。アメリカにかなり依存した生活を送っていることを実感しました。

 他にはちらほら希望のあるものもありましたが、総じて暗めのニュースが多かったです。

来年は明るい年になるようにしたいものです!
みなさんよいお年を! 

論文不正で警察が動く?

2013年12月10日

Image search triggers Italian police probe. Nature, Vol. 504, Page 18, 2013.
Call the cops. Nature, Vol. 504, Page 7, 2013.

先週は神戸で行われた分子生物学会に行きました。たくさんの研究者が集まっていて、会場に向う電車は大混雑(途中駅の人は何事かと見送っていましたが)でした。

その分子生物学会でも論文不正が話題になっていましたが、タイムリーにネイチャーでもニュース欄で論文不正が報じられていました。


論文不正がきっかけに警察が動いているという記事です。

さすがに日本では大学や学会が自主的に調査をしますが、警察まで動くなんてどの国か?



イタリアでした。

ネイチャーの社説でも、もっと他の国もここまでやった方がいいんじゃないの?
なんて主張していますが、これは論文不正をされて困っている方の意見ですよねえ。

 

論文出すのは大変です

2013年12月02日

A small-molecule AdipoR agonist for type 2 diabetes and short life in obesity. Nature, Vol. 503 493-499, 2013.

いやあ、すごい論文を読みました。
もちろん、内容は素晴らしいです。
2型糖尿病の治療に役立ちそうな化合物を見つけた!というもので、ケチのつけることができない素晴らしいデータの数々。


もっとも、僕がすごい、とうなったのはこのデータたち。この論文のために、膨大な化合物たちから効きそうなものを探し出して、それが本当に効くのかどうか細胞やマウスを使って確かめ・・・

はては、この化合物を飲むことによって糖尿病を発症しないで寿命が延びることを確かめるために800日マウスを飼い続ける(マウスの寿命は約2年なんだそう)・・・

ここまで来るとすごいなあ、としかいえません。もっとも一人で全ての研究をしている訳ではなく、チームで研究をして、一つの論文にしている訳ですがスケールが大きい研究です。


最後にこの論文、Natureに投稿してからアクセプトされるまで1年以上かかっています。何から何までスケールが違うなあ、と思う論文でした。

HIVは変装の名人

2013年11月25日

HIV-1 evades innate immune recognition through specific cofactor recruitment. Nature, Vol. 503, Pages 402-405, 2013.

エイズのもととなるHIV。ウイルスは自分自身では増幅することができず、宿主(感染相手)の細胞を使って増幅します。

感染すると普通は細胞側の防御機構が働き、ウイルスを除去しようと宿主側の抵抗が起きるのですが、HIVはそれが起きず、HIVが増幅しやすいのだそうです。

なぜ、このような防御機構が作動できないのか?

これにはHIV側のうまい戦略があり、慎重に感染した細胞内で自分の目印をかくしながらうまく自分を複製しているそうです。かくせないように包みを外してしまうと防御機構が作動してしまいます。

変装の名人HIV。悪いことは人でも誰でも堂々とはできないものです。
 

モテるにはやはりおしゃれじゃなきゃ?

2013年11月14日

Mating advantage for rare males in wild guppy populations. Nature, Vol. 503, 108-110, 2013.

昔、グッピーを飼っていました。
水槽も大きいのがいいなあ、とちょっとこだわった時もあったのですが、その当時の友だち(大学時代です)の下宿に行ってびっくり。なんと月2万のアパートに1mを越す水槽が!

度肝を抜かれました。

もっとすごかったのはその水槽の重みで床が傾いていたこと。そりゃ大きい水槽をおいたら確かに重いですが、あのアパートには耐震性なんて考えはあったんだろうか・・・ 


ともかく、この論文はグッピーの色パターンがなぜあんなに多種多様なのかを大々的な実験をしてみたというものです。著者ら(フロリダ州の方々)は実験のためにトリニダード・トバゴに行き、野生のグッピーを捕獲しては尾の色が透明か透明でないかで割合を極端に変えてプールに入れて繁殖させたそうです(ワイルドですね。水槽なんて比ではないです)。


すると、少ない割合の色パターンのオスからの子どもが多くできたんだとか。これは、希少な遺伝子型が有利になる一例と言われ、感染症が蔓延した際とか急激な環境変動があっても絶滅しないように、生物がとる仕組みと言われております。


でなぜ、このようなことが起きるのか。やはりメスが違いがわかるオスが好きだから。ということが指摘されていました。モテはまず見た目の違いから。 

新たなインフルエンザの薬?

2013年11月07日

The TLR4 antagonist Eritoran protects mice from lethal influenza infection. Nature, Vol. 497, 498-502, 2013.

インフルエンザ流行のシーズンがやってきました。
大流行しないといいのですが、どうなるか。

さて、今回の論文はインフルエンザの特効薬になるかも?という研究です。
Eritoranというエーザイが開発中の細菌感染による敗血症治療剤が、インフルエンザウイルスを感染させたマウスの致死率を劇的に改善させたそうです。

実はEritoranは細菌のもつ毒素をブロックする作用をもつのですが、その毒素の受容体を人為的になくしたマウスではインフルエンザウイルスにより死ににくいという知見がもともとあったため、実験してみたらなんと見事に抑えられたということだそうです。

これまでのインフルエンザ薬とは全く作用が異なるので、期待大です。 

論文はタダで読める時代に

2013年08月28日

Half of 2011 papers now free to read. Nature. 500, 386-387, 2013.

すみません、まったくもって論文の紹介ができておりませんでした。
今年は研究論文執筆で忙しい・・・と思ったら、今は他の研究者が書いた論文の査読(審査です)を自分が書いた以上の本数頼まれて審査する日々・・・倍返しされています。

なんでこんなにたくさん論文読まなきゃいけないんだ!しかも完全にボランティアだし(科学の発展のためという崇高な考えはわかっていますが)、と思っていたらNatureにこんな記事が。



昔(いまから10年くらい前)はほとんどの論文がすべてタダで読めることはありませんでした。全文読むことができる雑誌は逆に信用できるの?というくらい学術誌=高価=だから価値があるという図式がなりたっていました。

電大で定期購読している雑誌はオンラインで閲覧可能ですが、購読していない雑誌は図書館(総合メディアセンター)経由で外部機関にコピーを依頼(有料)するか、早急に必要な場合は直接出版社からお金を払ってダウンロードする(結構高いです)、もしくは著者に直接もらうことになります。

ところがいろいろな雑誌、または雑誌に掲載された一部の論文がタダで読めるようになり、それが年々増えてきたような印象をもっておりました。

やはり、といいますか、この記事ではなんと2011年では世の中の半分の論文がタダで読めるようになったと報告しています。その理由として、国策(EUやアメリカの援助を受けた研究はタダで論文を読めるようにする必要があるそうです)や、オープンアクセスジャーナルの急増があげられています。

確かに、近年はいろいろなオープンアクセスジャーナル(無料で読める雑誌)が増えてきています。そして、そういった雑誌からの査読依頼も増えてきています。オープンアクセスジャーナルは紙媒体と違いWeb上ですぐに公開できるのをウリにしているので、査読期間も短く、審査人をせかしてきます(と愚痴を)。

いけない、現実逃避していました。査読をしなくては。
査読が終わったら今度は面白いNatureの記事を紹介します!
 

塩辛いのは酸味と苦味をあわせた味?

2013年03月11日

High salt recruits aversive taste pathways. Nature, Vol. 494, Pages 472-475, 2013.

あまり今年度後半は面白い論文を紹介できていませんが、それは面白い論文がない・・・というわけではなくてただ単に論文を読んでいないからです。

本業を忙しくしていたらこのブログの存在を忘れかけておりました。一念発起して最近のNatureに載っている論文を読んでみたら、やはり最先端の研究は面白いですね。 

紹介する論文は、味覚に関する研究。 甘味、酸味、苦味、塩味と旨味を舌は認識することができますが、塩味は薄いとおいしく感じるものの、多すぎると逆にまずく感じます。

それは塩が濃いと酸味と苦味と同じシグナルが動いておいしくないことを伝えるんだとか。酸味や苦味を伝えるシグナル遺伝子をなくしたマウスは濃い塩をものともしないそうです(健康に悪いですね)。


じゃあ塩味は酸味と苦味をあわせた味なのか、というとそうでもないところが面白いです。

ネイチャーが選ぶ2012年の科学ニュースに日本は…

2012年12月27日

2012 in review. Nature, Vol. 492, 324-327,2012.

2012年もいよいよあと数日。

今年、長原は多忙を極めあまりブログを更新できませんでした。これから年末年始休暇返上で卒論要旨、修論要旨チェック、期末試験作成、論文執筆、他の頼まれ仕事の完成…書いていて終わるのか不安が。

来年は忙しくとも面白いネタは紹介するぞ!と決意をして、年内最後の更新です。

最近のネイチャーに今年の科学分野における回顧記事がありました。

特に注目するものとして、ヒッグス粒子の証明やヒトDNA配列の解析をしたENCODEプロジェクトをあげていました。両者ともかなりのビッグデータの解析が必要であったということで、大掛かりな仕事が花を開かせた一年だったともいえそうです。

ところで、回顧記事中に日本について言及されている部分が。

一つは論文改ざんをした日本人研究者(あ、あの人か!と思った方ではないです。この方は172本の論文を改ざんしたと考えられているそう)。

もう一つは世界各国の研究者が今年だした論文がどれだけインパクトを与える論文だったかを国別に集計した結果、日本は平均以下!という衝撃の事実…

日本の科学はいったいどうなるのか?2013年はまずは論文を書こう、と思いました。


みなさん、よいお年をお迎え下さい。

ロンドンオリンピック!

2012年07月25日

Team Science. Nature, Vol. 487, Pages 290-292, 2012.


科学雑誌、ネイチャーはイギリスで出版されています。


そしてイギリスといえば、もうすぐロンドンオリンピック!


先週のネイチャーでも、特集記事が掲載されておりました(論文ではないですよ)。


題して、チームサイエンス。

オリンピックの裏で頑張っている科学者にスポットをあてた記事です。しかもかなりマニアックなところまで。


まずは心理学者。一体なぜ?と思う人も多いと思います。実はオリンピックの後に行われるパラリンピックの一部競技には知的障害者が参加できる競技があります。ただ、2000年に健常な人が知的障害者として出場していたのが契機となって、この前のバンクーバーオリンピックまで知的障害者はオリンピックに参加できなくなっていました。
そこで、心理学者たちは厳格な定義を定めて、一部の競技において夏の大会でも今回から知的障害者の参加が可能になったそうです。


 また、これはおなじみドーピング検査。ドーピング検査の責任者は、このオリンピックの間、検査センター近くに住んで、オリンピックも見ずに(これは本当でしょうか?)ひたすら検査に明け暮れるそうです。


一番びっくりなのは行動学者。オリンピックは参加する人もそうですが、たくさんの人が観戦にロンドンを訪れます。そこで感染が起きたら・・・たくさんの人にあっという間に感染が広がり大変なことになります。実際にこの前のバンクーバーオリンピックでも麻疹が流行したそうです。
そこで、行動学者の一人の学者は、ロンドンに行くフライト網をデータベース化して、世界のある地域で感染症が流行した際に、一体いつロンドンに襲来するかがわかるようにしているそうです。そうすれば避難計画もたてやすい。起こっては欲しくないですが、起きた時のために、という研究ですね。


いろいろな人が携わっているオリンピック!待ち遠しいですね!

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