研究論文

一体コウモリはどうやって捕まえるの? 3

2011年09月07日

Ganglion-specific splicing of TRPV1 underlies infrared sensation in vampire bats. Nature, Vol. 476, Pages 88-91, 2011.


吸血コウモリはどうやって、暗闇の中で血を吸えるのか?

実は鼻の付近にある感熱センサ(神経)を使っているのですが、このセンサは29度以上のもの(血液なんかは29度以上ですから)を検知できるのだそうです。

ただ、もともとこのセンサ、43度以上のものしか検知できないところが、センサを作っている一つのタンパク質を作り替えることで大幅に吸血コウモリだけは低い温度でも検知できるようになったのだそうです。


とまあ、ここまでは科学的な面白さですが、個人的に疑問だったのは、一体このコウモリさんたちどうやって入手したの?というところ。普通吸血コウモリなんて売っていません。


実はコウモリは南米のベネズエラから入手していました。研究チームはほとんどアメリカの人たちだったのですが、一人だけベネズエラの方がいました。文献にはベネズエラから入手、とあったんで、その方が採取したんでしょうね。ただ、どうやって採取したんでしょう・・・

みんなで仲良くハンブンコ 2

2011年08月23日

Collaboration encourages equal sharing in children but not in chimpanzees. Nature, Vol. 476, Pages 328-331, 2011.


なかなか論文を紹介できず、すみませんでした・・・


わたしたちは、何かについて協力して達成できたら、その成果を平等に分かち合おうとしますが(中には独り占めしてやろうと思う人もいるかもしれませんが)、こういった当たり前と思っていることはいったい何才頃から意識せずに行っていることなんでしょうか?


ということで、調べてみたのがこの論文。


なんと2、3才くらいから、ある装置を2人で協力して動かし、もらえたビー玉(おもちゃですね)は2人で平等にハンブンコするそうです。

えらい!


でも、人間に近いチンパンジーでは、同じような実験を行っても(さすがにおもちゃではなく、この場合はえさをもらえることにしたそう)、2匹で平等にハンブンコすることはないそうです。


おおー、人間ってすごい。


ただまさか、人間でももらえるものをビー玉ではなく、お菓子にしたら壮絶なバトルが2人の間で起こり、ハンブンコすることなんかない!という結果に・・・・・・



はならないですよね、たぶん。

東北地方太平洋沖地震の論文 3

2011年08月02日

Coseismic and postseismic slip of the 2011 magnitude-9 Tohoku-Oki earthquake. Nature, Vol. 475, Pages 373-376, 2011.

なかなかブログを書けず、申し訳ありません。
自分の投稿論文でつい最近まで忙しく・・・


でもようやくアクセプト!されてとりあえずは解放されたのですっきりとした気分で自分の専門外の論文も読むことができます。


今回は、専門外ですが非常に大切な論文です。
東北地方太平洋沖地震で起こった大陸プレートの移動について、国土地理院の方々がGPSを用いて詳細に調べた論文が掲載されておりました。

地震の予測の上でも、このようにGPSにより監視、そこから推定することは大事だと思います。

またこの論文、投稿されてからアクセプトされるまでの期間が非常に短いのも、重要性を物語っています。

だいたい、Natureの他の論文は4ヶ月から1年弱アクセプトにかかるのが、この論文は3月31日に投稿され、アクセプトは5月25日。2ヶ月弱で掲載が決定されておりました。上で書いた、自分の論文よりも早く掲載が決定されております。。。





サイエンス誌に載った日本人研究者 3

2011年07月08日

まずは3年生の皆さんへ、研究室配属説明会のお知らせです。

『研究室配属説明会』
日時:7月13日(水)13:30~
場所:3120教室へ集合


配属決定方法の説明および研究室の紹介をします。
3年生の皆さんは忘れずに集合して下さい。

来年はそれぞれどんな研究室になるのか、楽しみです。



それから今日はタイトルにあるように、サイエンス誌に載った日本人研究者について紹介している冊子の2010年度デジタル版が公開されていますので、ご紹介します。

「Japanese Scientists in Science 2010−サイエンス誌に載った日本人研究者」

著者である研究者の研究内容やバックグラウンド、ラボ(研究室)などについて紹介しています。
論文からでは読み取れなかった研究の苦労や工夫がわかって興味深いです。
日本語ですので、ぜひぜひみなさんも読んでみて下さいね。



文責:アベ


大都市での生活はつらいよ 3

2011年07月05日

City living and urban upbringing affect neural social stress processing in humans. Nature, Vol.474, Pages 498-501, 2011.


やっぱりね。というのがこの論文を読み終わった後の感想です。



人口の少ないのどかな地域で生まれ育った場合と、人口が一万人くらいの町で生まれ育った場合、または人口が十万人くらいの大都市で生まれ育った場合、どの地域で一番ストレスがたまるのか?



を脳科学的に調べた結果、大都市で生まれ育つ方がストレスがたまりやすい!
ということがストレスを処理する部分である扁桃体の働きが活発であったことから科学的に証明できたそうです。



まあ、大都市は住むのには便利だけど、落ち着いた生活ができるか、というとそうではないだろうなあ、と誰しもが漠然と思っていることが、一つの科学的な指標でわかったということですかね。


ただ、被験者の数(これを探すのが難しく、インターネット上の補足欄にあったんですが・・・)が調べた限りでは32人!なんですが、これ、本当でしたらこのくらいの被験者数で今回の結論は導いていいんでしょうか。割に少ないような気がしてならない・・・

hikikomori... 3

2011年07月01日

Made in Japan. Nature, Vol. 474, Pages 541-542, 2011.

このほど開学する沖縄科学技術大学院大学(OIST)に関する社説、およびニュース欄で特集がなされていました。

 OISTでは5年間、自由に研究できる環境が与えられるため、世界から新進気鋭の研究者が教員として赴任する予定で、授業も英語で行われるためいろいろな考えの人が集まれる素晴らしい環境が作られそう・・・という手放しのほめようで、久しぶりにネイチャーに日本の明るいニュースが載っていましたが・・・


文中で目に留まったのは、題名にも書いたhikikomori。


いわく、日本の経済は落ち目で、韓国や中国にもハイテク関連機器の製造で抜かれ、日本の若者は海外に留学しなくなっている、いわゆる「ひきこもり」になっている、と。


さすがにひきこもりのことは、who shut themselves away in their homesという注釈がついていましたが、hikikomoriって英語にも使われているんですね。びっくりしました。


ところで、留学しないから日本はダメになるのか、というとそんなことはないと個人的には思います。違った考えを持つ人たちと話すことでいろいろな発想ができるようにはなるので、物怖じしないでどんどん積極的にいろいろな人と(たとえ外国人にでも)話す、のが重要なんではないのかな、と個人的な経験を踏まえてそう感じています。

そういう意味でも、日本でOISTのようなところができるのはいいですね。

呼吸法を変えれば蚊に刺されにくくなる? 3

2011年06月21日

Ultra-prolonged activation of CO2-sensing neurons disorients mosquitoes. Nature, Vol. 474, Pages 87-91, 2011.


前回の論文紹介からかなり時間がたってしまいました。
とうとう暑くなってしまいましたね。蒸し暑いです。
こうも暑いと、とうとうやつらの季節の到来です。
キンチョウの夏です。ではなく、蚊の夏です。


この論文では、どうやったら蚊に刺されないようになるか、という人類永遠のテーマに立ち向かい、なんと基礎研究に飽き足らず、ケニア(!)の蚊がたくさんいる場所で実際に今回編み出した研究成果が実際に有効であることを確かめている、実践的な論文です。


しかし、どうしてケニアだったんだ?別に近場でよかったのでは(著者はアメリカ人)という疑問はさておいて、蚊は人を見つける際に、匂いを頼りに近づく以外に、人の呼気の中に含まれる二酸化炭素の頼りに近づいているそうです。一定のリズムで二酸化炭素が放出されているのを蚊は検知してそこに生物がいるのを察知するのだそうです。


この蚊の二酸化炭素の検知システムを司っている、神経系をだましてやれば、人がいるかどうか察知できなくなるのでは?ということでその神経系をかく乱する化学物質を見つけたのです。



で、その化学物質が実際に効くかどうか、ケニアまでいって検証した・・・実際に実験は成功したんですが、この実験には2つの大きな小屋を用意して、そこに試験サンプルと対象サンプルをおき・・・とそれまでの細かい実験から、なんと大がかりな実験を行っていることか。でも、こういう実験手法、個人的には好きです。


ただ、一定のリズムで二酸化炭素を吐き出すことが蚊を寄せつけるのだったら、呼吸を時々変えてやれば蚊はこなくなるんでは?


と思って少し息を止めてみたりしましたが、さすがに苦しいですね。この発見した化学物質が世に出るのを期待しましょう。




植物病原菌を抑制するのは植物ではなく土壌の微生物 3

2011年06月04日

Deciphering the Rhizosphere Microbiome for Disease-Suppressive Bacteria
Science, Vol. 332, No. 6033 pp. 1097-1100, 2011.



生命理工学ゼミ犬任蓮環境コースは野菜の栽培を行っています。それに混じって私も今年はトマトDSC03162と枝豆を育てているのですが、土をいじりながら土壌微生物のことや葉っぱについてしまった病原菌について、栽培そっちのけで思いを馳せてしまいます…。

この論文は、病原性真菌の Rhizoctonia solani(立ち枯れ病菌)に対して抑制する能力を持つ土壌菌群について調べています。ある病原菌が発生した後、その土壌ではその特定の病原菌に対して抑制効果を持つようになることがあるらしいです。つまり、病原菌の発生によって菌叢が選択的に変遷したと考えられます。

どのように調べたかというと、Rhizosphere microbiome、つまり根圏に存在している微生物(主にバクテリア)のゲノムを1つ1つ分類してどのような菌がどれくらいいるかを調べています。1つ1つといっても、ものすごい種類が存在していますので、マイクロアレイという方法を使っています。これでいっぺんにある程度似た種類に分別することができるわけです。33,000種が検出され分類されました。

さらに、その中からもっとも効率的に病原菌を抑制することのできる Pseudomonas 属のある株をが単離され、この菌が抗真菌性のリボペプチドを合成していることがわかりました。
この菌は1種でも抑制効果を示しましたが、アレイの結果では、抑制効果を持つ土壌菌叢には特徴的な分類傾向が示されているので、実際にはこの菌株だけではなく、菌群の集団としての複合的な活性が重要だということです。


環境変化による環境中の微生物群集の変遷については、調べてみたいなーと思っていることの1つでもあるのですが、この論文の方法ではかなりのお金と時間がかかりそうです…。


文責:アベ


細胞の中にあるタンパク質の寿命はどのくらい? 3

2011年05月31日

Global quantification of mammalian gene expression control. Nature, Vol.473, Pages 337-342, 2011.

個人的にいやー、すごい、と思う論文を選んで紹介するスタンスをとっているのですが、私自身がすごいと思う基準として、

1.思いもつかなかったことを明らかにした論文を読んだとき
2.思いはつくけど到底自分自身ではできそうもない(経済的に、とかマンパワー的にとかの理由で)ものを力任せに解き明かししている論文を読んだとき 

の2つなんですが、この論文は後者にあたります。


ドイツの研究所と会社の研究チームたちが明らかにしたのは、細胞中にあるDNAからmRNAが転写されて、タンパク質が翻訳される過程にはどのくらい相関性があるのかということ。

 細胞中ではmRNAやタンパク質が合成されるだけではなく、それぞれを分解する機構も存在するため(いわゆる寿命ですね)、一つ一つ、遺伝子からタンパク質までの寿命を調べて、このタンパク質は寿命が長い、はたまたこのタンパク質は寿命が短い、もしくはタンパク質の寿命は短いけどmRNAはたくさん作られるから結果としてタンパク質は多く存在する、などはよく研究されていますし、私の研究室でもやっていますが、細胞全体レベルでやろうという研究はなかなかなかった(というよりいったいいくらかかるか、どのくらい人が必要なのかわからないのでそもそも私ならやりたくない)のです。


で、この研究チームは5000個以上のmRNA、タンパク質を瞬間的に標識して、経過時間とともに標識されていないものが少なくなり、標識されているものが増えてくるので、その割合を調べることでそれぞれの寿命を調べました。 

その結果、mRNAの寿命とタンパク質の寿命は案外きれいに相関性があって、タンパク質の寿命を決めているのはそのmRNAの寿命であることがはっきりとしたそうです(つまり、タンパク質の分解ではないということです)。

もちろん、抗酸化効果、呼吸活動、RNAスプライシング、mRNA合成のような常に必要とされるタンパク質は分解されにくく、結果としてmRNAの寿命に関係なくタンパク質の寿命が長いこともわかったとのことです。納得の結論です。


びっくりしたこと。
論文の一番最後に、著者はどの箇所でこの論文に貢献したか記述している箇所があります(最近は多くの論文でこのようなことを書くケースが増えてきました。貢献していない人は筆者になってはいけない、ということです)。
見てみると、タンパク質の実験をしたのは1人、同じくRNAの実験をしたのも1人。あとの6人はデータ解析です。意外に手を動かして実験した人の人数は少ないんですね。むしろプログラミングに人を割いておりました。

批評するのは難しいですね 1

2011年05月24日

There's a time to be critical. Nature, Vol.473, Page 253, 2011.


他の論文を実は紹介しようと思っていたのですが、あまりにも今の自分の心境にあった社説があったので、今回はこの記事を紹介します。今日は生命理工学系の皆さん向け、というより完全にプライベートな話題です。


大学教員は授業以外の時間に研究室の成果を世に出すべく、せっせと論文書きを行っております。


科学論文雑誌に掲載されるためには、実験者は素晴らしい研究を行って論文の形式にまとめあげて編集部に送ればそれで終わりという訳ではありません。


まずは編集部でチェックを受けた後、その論文を理解できる専門家(自分以外の研究者、です)が何人か覆面でレフェリー(審査員)となりその論文を批評して、論文執筆者に対してよりよい論文にするように書き直しや追加実験を要求します。

この要求は編集部を通して執筆者に伝えられて、一定期間内に論文を修正してまた編集部に送って・・・ということを編集部やレフェリーがその論文の内容に納得するまで繰り返して、めでたく掲載、もし納得できない場合は掲載が不可になります。 



で、この社説によると、レフェリーは執筆者に対して要求が過剰だ、本当にその要求は必要なのかを考えた方がいいのではないか、また編集部側でもレフェリーの意見が過剰でないか判断して、過剰な場合は編集部側でその要求をつっぱねてはどうかということを提言しています。





現在、ちょうど審査中だった論文が、レフェリーからのいろいろな要求とともに戻ってきて、ブルーな気持ちになっていたので、少しは気分も晴れやかになりました。

ただ、この記事にはこんなことも。執筆者は論文をあせって不完全な形で投稿せず、時間をかけてちゃんとしたものにしてから投稿しましょう、と。 。。

しかも、自分がレフェリー側にまわった時は執筆者に対していろいろと追加実験を要求していたような。。。僕に指示された方々、すみません。今度からは執筆者の側にたちながら審査したいと思います。

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